淀川区就労支援施設-PALETTE-

「エキスパンドメタルの雲」

大阪の淀川区に建つ就労継続支援B型の福祉施設。菓子製造、陶芸、活版印刷など様々な活動場所がある。この地域は町工場が多く、ここもその中の一つであるように、小さな工場が立体的に積み上がったような建物になった。

特徴はエキスパンドメタルである。建物の構成はシンプルで、鉄骨造で水平垂直の柱梁でできている。当初この素材を選んだ理由は、法規的な規制で階高を高く取れないためだった。大梁や設備配管を隠すために石膏ボードで水平天井を貼ると圧迫感が拭えず、その解決策が勾配天井であり、更に透ける素材だった。形態はキャッチーなギザギザ天井だが、透けて見えたりハリボテ感があったりその存在は強くも薄い、雲のようなものだ。天井を透過性のある勾配で幅を変えながら作ることで、強制的な区切りではなく、なんとなく今日はこっちの気分というような、それとなく誘導する仕掛けになっている。さらにメッシュであることから自由に物を吊るせる。天井壁が見えなくなるぐらいに飾り付けたり、使い倒してほしい。

出来上がってからの一番の発見は、近くで見ていたカットサンプルでは、透過性ばかりに目が行ったが、完成し、天井や壁を覆うほどの大きさになると、見え方に不透過な面が同時に現れることだった。つまり距離や角度によってエキスパンドメタルは面のように見える。障がいのある方々は自分の気持ちに素直に生きている。人と触れ合うのが好きで話しながら作業する人、みんなが昼食や休憩しているときに一人で黙々と作業する人。いわゆる社会には馴染めないかもしれないけど純真さは誰にも負けないところが、無骨さと透過性を兼ね備えた素材と通じると感じた。選定した当時は気づいていなかったが、今は彼らの人間性に影響を受けていたのではないかと思っている。

壁の素材は言葉で理解しづらい多くの室名を、感覚的に感じ取ってもらうようにその部屋にちなんだものを選定した。だが素材はなんでもよかったかもしれないと今は思っている。すべてを包み込むエキスパンドメタルの雲こそが、この施設の理念である、「自らの可能性を発見し発信でき、他者と交感することで新たな関係が生まれる場所。」を表す理解者となったと感じている。

PALETTE

所在地:大阪府大阪市淀川区
用途:物品販売業を営む店舗/児童福祉施設等
共同設計: 坂東幸輔建築設計事務所
構造設計:なわけんジム
電気設計:タクトコンフォート
設備設計:ジーエヌ設備計画
ファブリック: fabricscape
ロゴ:6D-木住野彰悟
家具: Brunch, Promenade Furniture
施工:加藤組
写真:太田拓実
構造:S造
階数:5F
建築面積:280.30㎡
延床面積:859.52㎡
設計期間:2017.7-2018.9
施工期間:2018.9-2019.9