海辺の別荘 野間の改構

防砂と改構

「なぜこうしなかったのか」そう思わせるのが、この海辺の別荘の改修である。愛知県知多郡美浜町は知多半島の先端近くに位置し、計画地は海が眼前に迫る最高のロケーションだ。敷地の両隣を見渡しても建物は遠い。なぜなら条例の変更により建築不可地域へと書き換えられたからだ。建替はできず、必然的に改修となった。強い海風は塩害の他に多量の砂を運んでくる。アルミサッシの隙間からも砂が入り、窓辺には砂が積もる。庭への砂対策ため海側に建つ倉庫は、既存建物との離隔によりその隙間から砂が吹き込む。その場しのぎの継接ぎで対策が繰り返され、結果海への眺望は失われた。問題は2 階にもある。以前の住人により装飾と仕上げを施した和風洋風入り交じる内装で、海を楽しむ前にその装飾が目立つ。

要望は砂を今以上に防ぐこと、海への眺望を獲得すること、庭と居間が一体で使える場所とすること、二階は落ち着いた場所とすること、の4点だった。既存図は存在しないが、調査を進めると1階居間は壁の下から外壁と同じタイルが覗いていた。つまり居間はもともと屋外のピロティーとして使用されていたことが予想された。建築当初は庭へと連続したピロティーを抜け、倉庫のない庭から海への眺望は素晴らしかっただろう。今回の改修において、建築当初の良さを取り戻しつつ、問題を解決しながら、先へ進めることが望ましい。ポリカーボネート波板で外壁・窓・倉庫を囲ったのは風除室ならぬ砂除室で、眺望を獲得してなお、防砂の機能を強化する二重外壁の役目を果たす環境装置である。これにより居間は庭への通り抜け土間へと戻り、半屋内空間となった。2階は、黒いラインを挿入し和洋の空間を二分した。どちらも通りを引き込むことで整理した。 先人の敷地との格闘の履歴から読み解き、「本来こうあるべきではないか」と思わせる構えが現れた。建築も勝手も構えを改める「改構」と呼ぶ手法を編み出した作品である。

海辺の別荘 野間の改構

所在地:愛知県知多郡
用途:保養所/別荘
施工:平田建築
写真:Ryuji Inoue
構造:RC+一部木造
階数:2 階建て
延床面積:176㎡(改修部分:70㎡)
設計期間:2017.10-2018.6
施工期間:2018.7-2018.8