床の間と掛軸

愛知県名古屋市にある文化のみち橦木館で行われた展覧会。会場は大正末期に建てられた元邸宅で、和室が会場という特殊な状況だった。建具に四周囲まれた和室4間貸切で、ギャラリーのように展示壁になりそうな壁はなく、貴重な建築物のため画鋲やテープなど建物を傷つけることはできず、展示方法から考えることが必要だった。

床の間と日本庭園をよく見られる縁側に面した部屋であることから、来客をもてなす部屋として使われていたと思われた。床の間は日本建築の和室によく見られるゆかを一段と高くした所で、座敷の上座にあたり、掛軸などを飾る場所として現在は使われており、飾りは季節やもてなしによって替えられ空間を彩っている。私達が展示するにあたって、来館者を最大限もてなすような場所になると良いなと考えた。掛軸に見立てた布に、書や絵となるようなパースや図面、時には生花のように模型を配置した。元々ある床の間が部屋に広がり、全体で包み込むようにもてなしている様子を想像した。掛軸とは言いつつ形を崩しているため、のれんやカーテンのような、御簾や几帳のような、障子や襖のような見え方も、場所と展示方法が相まって生み出した効果だと思う。また床に座ってみる場所も用意し、ふと視線を上げると庭を眺めほっと一息つくような、居心地の良さも残したかった。

床の間から空間をイメージすることを考えたプロジェクトである。

展覧会:『Glaze for the architect ~これからの建築家と展開~』
所在地:愛知県名古屋市東区橦木町2−18 文化のみち橦木館
会期:2017.12